はじめに
我が子の幼稚園を選ぶように、我が子の通う小学校を選べるとしたら?
「子育て移住」「教育移住」という言葉がSNSのハッシュタグにあるように、家族で新しい土地に移住してでも我が子に合う教育、子育て環境を選びたいと考える家族が年々増えています。「学校を選ぶ」ということはどういうことなのか?この記事では、近年の日本における多様な教育についてご紹介していきます。
「オルタナティブスクール」とは
- 定義
オルタナティブスクールとは、「独自の教育理念を掲げている民間の学校」です。オルタナティブとは、「代替の」「もう一つの」という意味があり、オルタナティブスクールには「新しい選択肢の学校」という意味合いが含まれています。 - フリースクールとの違い
フリースクールとは、広義ではその名の通り「自由な学校」。海外では、フリースクールの中にオルタナティブスクールも含まれています。しかし日本では、フリースクールというと「不登校の子が行く学校」という狭義で捉えられることが多いため、あえて「オルタナティブスクール」と位置付ける学校もあります。 - 代表的なオルタナティブスクール
オルタナティブスクールの運営は、学校法人、一般社団法人、NPO法人、個人事業主など様々です。どこまでをオルタナティブスクールをするのか、はっきりと線があるわけではありません。
30年前に和歌山県にできた「きのくに子どもの村学園」は今や全国に5校に広がる大人気の学校です。他にも「サドベリースクール」「シュタイナー学校」「イエナ・プラン学校」など、それぞれ独自の教育方法、理念を掲げたオルタナティブスクールは、全国各地に年々増加し続けています。
「ここのね自由な学校」はどんな学校?
ここでは、私が仲間と共にNPO法人で運営しているオルタナティブスクール「ここのね自由な学校」(以下、ここのね)を例に、全国のオルタナティブスクールについて詳しくご紹介していきます。
- 概要
ここのねの対象年齢は小中学生で、月曜日から木曜日の週に4日開校。現在12人の子どもたちが県内各地からバスや電車、車で通ってきています。開校する日数や時間、対象年齢などもオルタナティブスクールによって様々です。中には4歳から対象年齢に含む学校もあります。
学校の理念は「わたしの『こたえ』を創る」。自分にとって幸せな人生とは?いかにして生きていくか?自分の心と向き合い、対話できる子が育っていく学校でありたいと思っています。 - カリキュラム
ここのねには、「かず」「ことば」「全校ミーティング」「音楽」「ダンス」「ヨガ」「性教育」「調理実習」など、常勤スタッフや外部講師による様々な授業があります。また、「ラボ」「プロジェクト」など、子どもたちが自分の好きなことを見つけ、主体的に学ぶ時間も多くとっています。「学びが楽しい!」で溢れる学校であるようにスタッフは日々挑戦を続けています。
オルタナティブスクールの中には、あらかじめ決まったカリキュラムが全くない「サドベリースクール」や自然の中で思いっきり遊びながら五感を通して学ぶ「自然学校」など、様々な形態があります。 - 義務教育を「卒業」できるのか
オルタナティブスクールに我が子を通わせる場合、私立以外は、住んでいる地域の公立の学校に在籍したまま通うことになります。その場合、在籍校の校長先生の判断でオルタナティブスクールに通うことが「出席扱い」となるかどうかが決まります。
2017年に「教育機会確保法」ができたことにより、全国のオルタナティブスクールが「多様な学び場」として認められ、公立の学校似通っているのと同等の「出席扱い」となることが増えてきました。ここのねも「出席扱い」が認められている子がいます。ちなみに義務教育では、出席日数に関わらず、在籍している子は全員、「卒業」することができます。 - お金のあれこれ
全国のオルタナティブスクールは、国からの援助がなく、ほとんどの学校が学校に通っている生徒の学費のみで学校を運営しています。そのため、どうしても入学金や月謝がかかります。ここのねは月謝を4万2千円頂いていますが、高いところで月謝は6万円台、安いところで2万円台というようにその学校によってかなりの差があります。学校の寮があるところは、月謝プラス寮費もかかり、交通費も別途かかります。
資金面で通わせたくても通わせられない親子がいること、運営が厳しく数年で潰れてしまう学校があることなど、まだまだオルタナティブスクールをめぐる課題は多いです。
おわりに
オルタナティブスクールのイメージは少しは掴めたでしょうか?
色んな形のオルタナティブスクールがありますが、大事なのは「本当にその子に合うかどうか」だと思います。学校を選ぶときは、親の思いだけで決めるのではなく、本人の意志がとても大事です。気になる学校があったら、ぜひ見学や体験をさせてあげてくださいね。
ちなみに我が子は、「ここのねか公立の学校か」を半年間悩んだ末に、公立の学校を選びました。公立の学校の方が自分に合っていると思ったんだそうです。公立の学校もオルタナティブスクールもどちらが良いとか悪いとかはありません。どちらもそれぞれの良さがあります。もし、「公立の学校に行けない自分はダメだ」と自分を責めている子がいたら、少し視野を広げて、色んな選択肢があることを知ってほしいなと思います。
そして、一人でも多くの子どもたちが幸せに生きる道を見つけられますように。