お知らせ:大分県

「私たちらしさ=独自性」を大切に              必要なのは変わらぬ活動の軸と           変われるリーダー

近年、家庭やこどもを取り巻く環境は大きく変化し、孤立しがちな子育て世代を地域で支えようと、大分県内各地でさまざまな取り組みがなされています。一方で、目の前の活動に精いっぱいで、次世代のリーダーや中核人材の育成まで手が回らない現状も、少なくないのではないでしょうか。  

そんな支援者の一助になればと、大分県では、地域の力を子育て世代の支援につなげる「子育て応援活動人材育成事業」の一つとして、すでに地域で子育て応援活動に関わっている30~50代の方に向けた「リーダー養成講座」を毎年開いています。

最近、こども支援団体にかかわるようになった私も、団体の行く末が気になっているところ。「自分の活動にどう活かすか」を一緒に考えることができるという本講座に参加し、これからに向けたヒントを見つけることにしました。  

これからの方からベテランまで 業種を超えた出会いの場

講座は全3回。活動を始めて間もない方から20年以上活動されているベテランまで、業種を超えたさまざまなの立場の方が集まっていました。

第1回の9月24日は、九州最大規模のママコミュニティ「九州のママ集まれ!」代表の本室朝美さんが「AI時代の活動運営力~安心して動ける子育て応援の役割とは~」をテーマに、グループワークを交えながらお話しくださいました。  

ママや女性の声を基にした社会の新たな仕組みづくりや行政・企業と連携した事業企画・運営などに奔走する傍ら、3児の母でもある本室さんは最近、娘さんとのやり取りを通して、親世代とこども世代の「当たり前」の違いに気づかされたといいます。

そこで「自分と違う」と最近感じたことを、チーム分けされたグループごとで話し合い、発表することに。

私は全く思い浮かびません。そこで聞き役に徹していると、自分も同じように感じたことがある点と新しい視点の両方が挙がってきて、「そういうことでいいのか」と、カチコチの頭が少しほぐれていくのを感じます。  

「良いこと」と「選ばれること」は違う  大切なのは「私たちらしさ」

本室さんはリクルートグループのブライダル領域でエージェント業に携わっていたころの経験を例に、違いが見えにくい子育て支援の現状を指摘。「“良いこと”と“選ばれること”は分けて考えた方がいい」という、自分の価値観をひっくり返されるような一言に目からうろこが落ちました。  

では、どうすれば選ばれるのか。大切にすべきは「私たちらしさ=独自性」で、忙しい子育て世代が探す手間を減らす上では重要なことだといいます。「奇抜である必要はなく、相手が自分に合う場所を見つけやすくしてあげることが重要なんです」

頑張って活動しても集客がうまくいかないとモチベーションを維持していくのも難しくなりがちです。「だからこそ選ばれることはとても大切だし、手を抜いてはいけないところ」と強調。相手が探す手間を減らすことは、活動する側のメリットにもつながるという視点は自分の中になく、新鮮でした。

その後のグループワークで、活動を始めたきっかけ、大切にしていること、参加者から喜ばれることを書き出すと、これまで自分がかかわってきた活動の大事な部分が見えてきます。 「今書いたのが独自性の種。独自性はすでに自分たちがたいせつにしていること。それを言葉にすることが第一歩です」と背中を押してもらうことができました。

AIは便利だからこそ、活動で大切にしたい軸が必要

そんな中、最近気になっているAI(人工知能)を活用した団体運営についても解説してくださいました。

膨大な情報から確率的に最も適切な情報を抽出すると言われるAIの回答は、ともすれば平均的になりがちです。例えば全国100団体がSNSの投稿文を同じようにAIに頼んだら、似たような文章が100通りできる可能性があり、「私たちらしさ」が残りにくくなります。「便利だからこそ、活動する上で大切にしたい軸が必要」と本室さん。子育て世代に選んでもらうには探しやすさが重要といった話にもつながり、さらに学びが深まりました。

大切にしたい軸であるMISSON(何のために)、VISION(どんな未来へ?)、VALUES(何を大切に?)が言葉になっていると、かかわってくれる人も自分に合った深さや距離感で参加しやすくなるとも。コミュニティ運営に携わるご自身の経験から、「大切にしていることを少しずつ言葉に出していくと、らせん階段を上がっていくように少しずつ活動が育っていく」と実感されているようでした。

リーダーに必要な力とは

最後のグループワークでは、これからの子育て応援活動のリーダーに必要な力について意見交換。 思いを伝える力、俯瞰的にものごとを見れる力、健康、傾聴する力…。受講生からさまざまな理想のリーダー像が出る中、本室さんはこう答えました。  

 「活動には変えない軸、リーダーには変われる柔軟さが必要ではないかと思います」

この日の講座はまさに、このままでいい自分と変わったほうがいい自分に気づき、見つめ直す機会となりました。 講座後の交流会も含め、グループワークで受講者同士、思いを共有できたことも、自分の活動を言葉にする後押しをしてもらえたような気がします。

言葉にするだけで新たな一歩が踏み出させそう―講座を終えると、そんな思いであふれていました。

第1回の講座を終えて

受講後アンケートでは、受講者全員が現在や今後の活動に「とても役に立つ」「役に立つ」と回答。ほとんどの方が新たな一歩や挑戦について考えるきっかけになったと答えています。自分の「当たり前」と参加者・支援者の「当たり前」が違う可能性があることに気づくきっかけにもなったようです。

印象に残った内容としては、

 「良い活動と」「選ばれる活動」は違うという視点

 変えない軸と、変われる柔軟さ

 私たちらしさ・独自性を言葉にすること

などが多く挙がりました。
講座前に感じていた自分自身の活動や団体運営の課題について「AIを使ってみたいが活かし方が分からない」と不安に感じていた方もいたようですが、受講後は「AIを活用する上で、自分たちの活動の目的や価値観を判断基準として持つことが大切だ」と強く感じる人が大多数を占めていました。同時に、自分たちの活動の「私たちらしさ」や大切にしていることを言葉にする必要性を実感したようでした。
また、AIの導入や選ばれる工夫、求められるリーダー像などを考え始める機会にもつながったという感想も寄せられました。

講師紹介

本室 朝美(もとむろ あさみ)
大分市出身。一男二女の母。リクルート退社後、教育・食育・地域活動に携わり、2020年にママ同士の情報交換や出会いの場となるコミュニティ「大分のママ集まれ!」を発足。現在は九州全域にコミュニティを広げる「ママ集まれ!」シリーズの統括代表を務め、地域社会に根ざした視点での事業づくりに力を入れる。「共感・構造理解・社会との接点」を強みに、ママや女性のリアルな声を行政や企業とつなぐリサーチ・コミュニケーションが専門。
本講座の事業受託者である「合同会社co-e connect」の代表も担う。

合同会社co-e connectのサイトはこちらからご覧いただけます。
https://co-ec.com

(写真・秋好聡子、文・幸咲子)

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