主体性ある発信こそ、人の心を動かす|スタッフ同士の丁寧なかかわりでSNSのリスク管理を
地域の力を子育て世代の支援につなげる「子育て応援活動人材育成事業」を進める大分県。その一つとして、次世代のリーダーや中核人材の育成を目指し、すでに地域で子育て応援活動に関わっている30~50代の方に向けた「リーダー養成講座」を毎年開いています。
第2回、9月30日開催の講師は、九州一の規模を誇るママコミュニティ「九州のママ集まれ!」の副代表としてSNS活用にも携わり、元教師として子育て支援や家庭教育分野での講演活動も行っている森田典子さん。「子育て支援のためのSNS活用とリスク管理講座」と題してお話くださいました。 子育て応援活動をしていく上で、SNSの発信は今や欠かせないもの。所属団体のSNS担当としてどのように届けるのが効果的か、そのヒントを求めて聴講しました。
誰もが簡単に情報発信できる現代の課題とは
「皆さん、SNS発信されてますか?」
森田さんが会場に問いかけると、参加者全員の手が挙がりました。
誰もが簡単に情報発信できるようになった今の時代。「投稿してもどこにあるか分からない。受け手と同じくらい発信者側がいるのが実情です」と説明します。

自分たちの投稿を目に留めてもらうために投稿数を増やしたりリールを使ったりする方法がありますが、子育て応援系団体の8割以上がそこに労力を割けないのが現状。
①リソース(時間・人手)不足
②スキル・ITツールの壁
③担当者への丸投げ
④リスク・トラブルへの漠然とした不安
が発信の課題にあり、この4点を解消することが好循環を生むカギだといいます。私自身、こども支援団体のボランティアとしてかかわる中で感じていた課題ばかりです。
SNSは活動の価値を必要な人に届ける道具
投稿する上で大事なのは、MISSION、VISION、VALUES(MVV)をベースの発信文章にすること。頭の中で、第1回の講座の内容とつながります。言語化が苦手で時間がかかるのであれば、AIを活用するのもお勧めだそうです。
「SNSは活動の価値を必要な人に届ける道具」と森田さん。子育て応援系の団体が届けようとしているものは、ほとんどが有形ではなく無形の「人の心」。だからこそ、複数人で運営している団体は誰が発信しても核となる価値(目的)、MVVの軸に沿っていることが重要になります。
「団体運営のSNSは個人の投稿の寄せ集めになってしまわないよう、誰が発信しても活動の目的や信念がぶれてはいけない」とアドバイス。団体の価値が上がって協力者が出てくるようになると、課題の人材不足の解消にも期待が持てるといいます。
安心できる環境が育む主体性

さらに必要なのが、中核メンバー以上の個人のSNS発信。当人が「主体性」を持って取り組めているかが重要になります。「やらされている、お願いされたから出している投稿は面白いと思いますか?」。中核メンバーではないですが思い当たる節がある私は、森田さんの言葉にドキッとさせられました。
主体性を育むには
①心理的安全:プレッシャーがなく、本音が言える場・空間がある。
②参加・決定感:自分も意思決定にかかわっている感覚がある。
③つながりと信頼:他者とつながっていて、信頼されている関係性。
④成長の実感:自分が成長している感覚が持てる
が大事だといいます。
「ちょっとした成長の積み重ねにより、人間は主体的に成長していく」。子どもを育てるのと同じように、信頼関係と安心できる場所の必要性を訴えていました。
必要なのはバズリ投稿ではなく、活動の価値を届ける発信
また、SNSのリスクについても言及。SNSには自己承認欲求を一時的に満たしやすい効果があることから「いいね数」や「フォロワー数」を意識しがちですが、それらを狙った過剰な投稿はリスクと隣り合わせ。「地場で目の前の人を救いたいときに、バズるような投稿が必要なのかという点は立ち返ってほしい」と森田さん。投稿後に問題となった過去の事例を紹介しながら「重きを置くのは活動の価値を届けるということ。アカウントを伸ばすことが目的になっていないか、もう一度考えてほしい」と呼びかけました。

そこで、実例を基に作成した架空の画像を見ながら、公開していいかどうかをグループワークで話し合うことに。一人だと気付かない点も複数人で考えることで、個人が特定できる情報や書類はないか、著作物は映り込んでいないかなど、さまざまなNGポイントが見えてきます。
「ここはダメじゃないかな?と言い合える時間があることがリスク軽減につながります」。森田さんの言葉が実感として伝わってきました。
丁寧にスタッフがかかわれる環境づくりを
さらに「子育て応援系の活動をしている人は、個人(私生活)と団体の仕事、活動の線引きが難しい場合も多く、投稿内容によっては炎上や団体への不信感につながるケースが起こりうる」とも。とはいえ表現の自由は認められており、ルールの明文化が難しいもの。現時点でできる改善・予防策としては、
- 目線を変えてもらう(自分の愚痴や共感の欲求が主になっていないかなど)
- 言葉をポジティブに変換する。
- チーム内で考える時間をつくる。
の3点で、「ノウハウやデザイン力を培う前に、丁寧にスタッフたちがかかわれる土台、環境づくりに時間を割いていくことがうまく回すコツではないかと思います。地域の根っこを底上げしてくださっているのは、熱い思いをお持ちの地域で活動されている皆さん。SNSをうまく活用して活動が継続できれば、救われる人が増えてくるはずです」と締めくくりました。

今までぼんやりしていたSNSへの理解がクリアになり、リスクへの認識の甘さを痛感した今回の講座。発信者の一人として、受信者や仲間へのリスペクトを忘れず、活動の価値を届ける投稿を心掛けたいと気持ちを新たにしました。第1回の講座内容ともリンクする部分が多く、活動の思いを届けるために必要なことを改めて整理する機会となりました。
第2回の講座を終えて

受講後アンケートによると、受講者は「誰に向けて、何を発信すればいいか分からない」「活動の魅力がうまく伝わっていないと感じる」といった課題を抱えていた方ばかりでした。
印象に残った内容を尋ねると、「SNS発信の目的整理」が最も多く、「届けたい相手に合わせた発信」が続きました。新たな一歩や、役割・取り組みへの挑戦について考えるきっかけとしては、全員が「とてもなった」と回答。今後見直したいSNS発信や広報の方法については、自分の思いの軸を持っておくことや投稿のタイミング・回数、MVVをはっきりさせてスタッフと共有することなどが挙がりました。
また、リスク管理の必要性についても「強く感じた」が回答を占め、受講者一人一人が考える機会になったようでした。
講師紹介

森田 典子(もりた のりこ)
山口県岩国市出身。一男一女の母。教育現場での経験と、脳科学の知見を活かし、「子育て」と「女性のキャリア形成」を支える専門家。英語教育やリトミック指導をはじめ、多世代の親子と関わる現場経験が豊富。近年は、自己理解を深めるブレインアナリストとして思春期の親子関係支援にも力を注いでおり、ママコミュニティ「九州のママ集まれ!」の副代表や講演家、県の審議会委員としても活躍中。
本講座の事業受託者である「合同会社co-e connect」の業務執行役員も担う。
合同会社co-e connectのサイトはこちらからご覧いただけます。
https://co-ec.com
(写真・秋好聡子、文・幸咲子)
