コラム:子育て

子育ては10歳までに決まるのか!? ~思春期の自己肯定感~

思春期頃の保護者のみなさんであれば、「褒める・認める・受け止める」という子育て3種の神器のようなキーワードを、耳にタコができるほど聞いてきたのではないでしょうか。
「自己肯定感+子育て」は、今の流行りの子育てのひとつと言ってもいいでしょう。

しかし、その活用例や内容は幼少期向けのものが多く、10歳以上のお子様をもつ保護者の、皆様からは、「はっきり言って、今更感です。」「やり続けて、今です。」「もう手遅れなのでしょうか。」などと落胆の声も聞こえてきます。

そこで、今回は、思春期からの自己肯定感についてお話しようと思います。

自己肯定感とは

その言葉の通り「ありのままの自分(自己)を肯定する感覚」のこと。
他者と比較することなく、自分自身が「今の自分」を認め尊重すること。

ここで言う「今の自分」とは、過去、現在、未来、そして、自分と関わる全ての関係を意味していると考えられるので、私の考える自己肯定感とは、上記の内容に他者愛を含めたものが自己肯定感ではないかと考えています。

今の自分・ありのままの自分を追及するがあまりに、他者を傷つける・迷惑をかけることは、自己肯定感とはまた別の話ですよね。

このように人生・人としての基礎となる自己肯定感ですが、思春期頃になると、下がりやすいといわれています。

自己肯定感が下がりやすい

その原因を将来の夢を例に挙げてみてみましょう。

現実と空想の境界線

6歳以降子どもは、成長に併せて徐々に、現実と空想に境界線を引きはじめ、夢は現実味を帯びるようになります。


例えば、戦隊ヒーローがすごく好きな子の夢の場合

  • 幼少期 手からビームが出せると信じ「戦隊ヒーローになりたい!」と考える
  • 児童期 「手からビームは出せそうにないな。戦隊ヒーローかっこいいけどな。」と思うようになる
  • 思春期 「役者になって戦隊ヒーローに出ればいい。役者のなるにはどんな道があるんだろう。」と考える
  • 青年期 役者になるのは難しいかもしれないから、もっと堅実な道も考えよう

このように、年齢にあわせて、夢の描き方は現実味を帯びてきますよね。
空想と現実の境界線がはっきりし始めるのが思春期頃といわれており、それと同時に、周囲と自分を客観的に見るようになってきます。

すると、さらに次のような変化が起きてきます。

「あの人より優れている・劣っている」

この精神的な成長がみられるようになる頃から、周り」や「周りの中の自分が気になり始め、他者と自分を比較するようになります。

これは、「周りの大人が比較するから現れる」というものではなく、程度差はありますが、成長の過程で現れるようになると言われています。

また、この時期に自分が思い描いていた理想と現実のギャップ自信を無くす子も少なくありません。

これら子どもの成長が、自己肯定感を下げやすくしてしまう原因の1つとなっています。

思春期時期に親ができること

話を少し冒頭に戻しますが、子育て3種の神器「褒める・認める・受け止めるは基本として大事なことですが、思春期頃になると、「これだけでは上手くいかない。」「はっきりって今更感。」のような言葉が出てしまうには理由があります。

実は、思春期頃になると、この3種に次の3つのプラスアルファが必要となってきます。

①子どもが存在価値を感じる機会 

上記に述べたように、この時期の子ども達は自分と他者を比較し始め、劣等感を感じやすくなるため、この時期に、「誰かの役に立つ」という経験が非常に大事になってきます。

思春期頃になると親よりも友人からの信頼を非常に重要とします。
その時期に、友人から相談や頼み事をされ、その行為に対して感謝される。
という経験は非常に価値あるものになります。
(この相談や頼み事は悪意の無いものです。)

②家庭内での存在価値

存在価値と言うと大げさに聞こえますが、友人からの信頼、頼りにされている期待感
これらを家庭内に置き換えた場合、どのようなものがあると思いますか。


お手伝い」と考えがちですが、「お手伝いをして」とお願いすることは、この時期には特に効果的ではありません。

やらされている感覚では相手の役に立ったという感情よりも、「ウザイ」という感情が先にたってしまいます。


何かをさせるというより、日常の中でちょっと助けてもらう、お願いする内容で大丈夫です。
「○○してくれない?」
「○○してみない?」
と尋ねたら、その答えは子どもに委ねましょう。

重たい荷物・家具を運んでもらったり、家事を手伝ってもらったり、ガーデニングを一緒にするでもいいかもしれません。
子どもの好みにあう些細な内容で、家庭内の役に立てることを探してみてください。

この時、行動があったなら、おかげで助かったよ。ありがとう。」と感謝の言葉をさらりと添えるのを忘れないようにしましょう。

③親にしかできないアプローチを知る


先ほど述べたように、思春期頃になると、親よりも友人との関係、その中での存在が大事になってきます。
それでも、親にしかできない自己肯定感アプローチがあります。

それは、「子どもが失敗した時、挫折した時、うまくいかない時」これらの時こそ親の出番です。
「どんな状況のどんな場合でも、あなたの見方であり、理解者である」と温かく包み込むことです。

思春期頃になると、直接的なハグや声掛けではなく、温かく包み込むような存在でいることが大事になってきます。

「たったこれだけなの。」と思われるかもしれませんが、些細なやり取りができ、お互いに支え合える親子関係であることが重要であり、思春期児の健やかな成長のために親ができることではないかと考えています。

最後に

「親にとって子どもは何歳になっても子ども」
私も母によく言われてきました。
その通りですね。

子どもは何歳になっても、まだまだ幼く、頼りなく、心配になることもあります。
ですが、思春期頃になると、親がやってあげる。よりも、親はサポート役に徹すると良いのかもしれません。

今回書かせていただいた内容も、「たったこれだけでいいの。本当かしら。」と思われた方もいるかもしれませんが、サポート役だと考えると、この程度がちょうど良くなってくるように感じるのではないでしょうか。

不安定な時期の子ども達を突き放すでもなく、手や口を出しすぎるでもなく、心で支え、愛のあるサポートをしていただければと思います。

ABOUT ME
森田 典子
森田 典子
大分市在住2児の母 ●思春期の親子関係専門家 ●元教師 ●心理カウンセラー ママが幸せになるであることが子育てには一番大切です。それにはママの心にちょっと余裕ができること!ママの心の余裕は子どもを笑顔にします。その余裕(心の隙間)が作れるように活動をしています。