「これが私のライフキャリア」は、ママとして、女性として、社会人として、様々なライフステージで活躍する女性に、仕事だけでなく人生全体のキャリア(ライフキャリア)をインタビューする企画です。
これからの働き方や生き方に悩むことの多いママ世代。
理想の未来を描くためのヒントが見つかりますように。
4人目は「ベビーウェアリング※コンサルタント(抱っことおんぶの専門家)」として抱っこ・おんぶの方法を教える活動と、ベビーシッターの活動を行っている吉野かおりさん。
旦那さんの転勤に同行し、大阪・埼玉で2人のお子さんを出産。2017年に旦那さんのご両親が暮らす大分県へ移住。
「ベビーウェアリングは少子化対策になる!」と力強く語ってくれたかおりさん。
その魅力や、やりたいことにまっすぐ進んできたかおりさんの強さの秘訣についてお伺いしました。
※ベビーウェアリング:道具を使い、密着して安定した抱っこやおんぶをすること
引用:(一社)日本ベビーウェアリング協会HP
お母さんの身体は楽に、赤ちゃんは幸せになる抱っこの方法
ー現在の活動について教えてください。
ベビーウェアリングといって、抱っこ紐のほか、スリングやさらし、兵児帯(へこおび)、ベビーラップなどのさまざまな布を使った赤ちゃんの抱っこ・おんぶの方法を教えています。
間違った使い方をしていたり、よく分からないまま使ったりしている人が多いので、安全に・快適に使える方法を教えています。
あとは、お子さんを預かるベビーシッターの2本柱で活動しています。
ーベビーウェアリングの魅力は何でしょう?
ベビーウェアリングは、赤ちゃんとお母さんの体型に合わせてピタッと密着して抱っこできるのが特徴です。お母さんと赤ちゃんが一体化する感覚。
この方法で抱っこしているとお母さんの身体の負担を減らすことができ、子どもをより愛おしく感じられるんですよね。
子どもが成長して抱っこできなくなると、寂しくなって「もう一人産みたい」と5人も6人も産んだ人もいるくらい。
これって少子化対策になるんじゃないかと思っています(笑)。
気持ちよく抱っこされているから赤ちゃんもむやみに泣かない。お母さんが困ることも少なくなります。
そうするとお母さんの行動範囲が広がって、我慢することが減るのではないでしょうか。
おんぶだと手が空くので、ラーメン食べることだってできちゃいますよ。
ずっとくっついているから、わざわざ時間をとらなくても、移動自体がスキンシップになっているのも愛着形成にいいですよね。
まだまだ知らない人が多いので、できれば妊婦さんのうちから、たくさんの人に知ってほしいと思っています。
ー仕事をしていてやりがいを感じるのはどんなときですか?
「楽になった~」と言われるときですね。
ずっと抱っこしていると、肩や腰の痛みが出てきたり、腱鞘炎になったりする人もいる。
痛みって、精神的余裕をなくすと思っていて。
痛みがなくなれば、怒りが子どもに向かうこともないし「抱っこしたくない」「とりあえずバウンサーで揺らしとこう」みたいな考えが減らせるんじゃないかと思うんです。
抱っこが楽になったら、もっと抱っこしたいと思う。それを一番感じてほしいです。
挫折する人を減らすために「自分が教える人になる」と決意
ーベビーウェアリングコンサルタントとして活動を始めたきっかけは?
長男が1歳くらいまでは、よくあるバックル式の抱っこ紐を使っていました。
でも、1歳過ぎると自分で歩きたがったり、そうかと思えば「抱っこ!」と言ったりしますよね。
その要求に応えて抱いたりおろしたりするのがすごく大変で、肩にも大きな負担を感じていたんです。
「もっと楽で、すばやくできる方法はないかな?」と情報を探していたところ、スリングの存在を知りました。
たまたまリサイクルショップでお目当てのスリングを見つけ、使ってみたら使い心地に感動!
「何これ?すっごい楽!こんなに便利なものをなんでみんな使っていないの?」と不思議に思うほどでした。
でも2人目が生まれ、新生児にスリングを使おうとすると難しくてうまくできない。
「あぁ、ここでみんな『スリング難しい』と挫折するんだな……。じゃぁ、ここを乗り越えるために教える人が増えれば、もっと楽に抱っこできるお母さんが増えるんじゃないか?」
「よし!私が教える人になろう!」と思ったのがきっかけです。
やりたいことにまっすぐ進む。諦めるのでなく、どうやったらできるか?
ーお子さんがいる中での資格取得は大変だったのでは?
資格取得のための講座を受けようと決めた時、子どもたちは未就園児。長女はまだ8ヵ月でした。
そのときすでに、埼玉から大分に引っ越すことが決まっていたのですが、当時の講座は東京や大阪などの主要都市でしか開催されておらず、大分に行ったら受けられるチャンスが減ってしまうのではないか……と思いました。
「関東にいるうちにどうしてもこの講座を受けたい!」と夫に伝えたところ、休みの日に子どもたちを1人でみてくれることになり、無事に資格を取ることができたんです。
やりたいことをやらせてくれた家族には感謝ですね。
ーやりたいことがあるけど踏み出せない、という人は多いかと思います。かおりさんはどのように乗り越えたのでしょう?
私はやりたいことをやっているだけで頑張っているという気は1㎜もないんです。
そのときやりたいと思ったからやる。子どもがいるからできないと思ったとしても、できる方法しか考えない。
やりたいことを達成するために「何が障害になる?それを取り除くにはどうしたらいい?」と考えています。
大分へ移住後、ドイツから先生が来日される機会があり、その講義のためにどうしても東京に3日間行きたい時があった。
そのときは、子どもたちをファミリーサポートや児童養護施設のショートステイなどのサービスをいろいろ組み合わせて「こうすれば行ける!」と段取りして行くことができたんです。
やりたいことがあるならできる方法を考える。なんちゃなる!と思っています。
今後のビジョンを教えてください
体力をつけられるような体操を抱っことセットで提供できるようになって、元気なお母さんをつくっていくことが目標です。
たくさんの子どもたち・お母さんを見てきて、身体の動かし方が分からない、自分の感覚が分からないという人が多いなと。
抱っこ紐の調整だけでは解決が難しいと感じています。
これからは、赤ちゃんの発達を促したり、お母さんの身体を動かしたりできるような資格を取っていけたらと思っています。
取材を終えて
一見控え目な印象のかおりさんですが、ベビーウェアリングの話になると熱い想いが止まらない!
使命感を持ち、目標に向かってまっすぐ進んできたかおりさんの芯の強さが一言一言に込められていました。
「やりたいことがあるならできない理由じゃなく、どうやったらできるかを考える」という言葉は、ついつい躊躇しがちな挑戦を後押ししてくれる言葉であるように思います。
かおりさん、ありがとうございました!
(写真・文 新宮ゆうみ)