コラム:子育て

新しい教育トレンドになる? SELとは!?

日本ではあまり知られていない、子どもたちへの新しいアプローチ方法をご紹介したいと思います。

この方法は、子どもたちの「感情」に寄り添うことで、子どもたちの生きる力が発達していくことを重視しています。
そのアプローチ方法とはSEL(Social Emotional Learning)というものでアメリカ発祥の教育プログラムです。

*1994年には全米規模で、Social Emotional Learning(SEL・社会情緒的教育)を推進する教育団体『CASEL』が設立され、学校、家庭、地域での取り組みを進めています。

SEL(Social Emotional Learning)ってなに?


SELとは、日本語では「社会性と情動の学習」と言ったり、「社会情動的教育」と言われたりします。
日本語にする方が難しいので、ここではSELと表記します。

自分以外の誰かと心地よい人間関係を築き、問題を適切に判断し対処できるようになるためには、自分をよく理解し、周りの人と思いやりをもって関わることが大切です。
そのための、社会性や感情スキルを育てるプログラムであり、学力向上を目指したものではなく、数値化が難しい非認知能力の部分を伸ばす関わりとなります。

SELは学力向上を目指したプログラムではありませんが、結果的に学力にもよい影響をもたらす。という話もあります
なぜなら、自分をよく理解している子どもほど、目標のために自分を律することができ、また周囲と良好な関係をきづけるので無駄なストレスが少ないのではないかと言われています。

SELに含まれる5つの項目:

  • 自分をコントロールする力
  • 他者を理解する力
  • 他者との関係を築く力
  • 責任をもって意志決定する力

なぜ今の時代にSELが必要なのか?

  1. 時代の変化
    昔はテストの点数(学力)や運動神経が良い(運動能力)など数値化しやすい能力で評価されてきましたが、最近では、数値化した能力よりも、「コミュニケーション能力」や「問題解決能力」といったその場面に合わせた柔軟に適応できる力が重要視さるようになってきました。
  2. 社会の変化
    現代はとても豊かになりました。スマホやゲーム、タブレットとなど便利なツールを使えるようになったと同時に対面のコミュニケーションに難しさを感じている子も多くなりました。
    自分の感情をうまくコントロールできずに、キレる子。またその逆で怒ってもいいような場面なのに、怒れずに自分の気持ちを抑えすぎてしまう子も増えています。 

便利で豊かになった一方で、誰かと上手に関わることに難しさを感じているとも言えるでしょう。

家庭での取り組み

SELはどの場面(学校、家庭、地域)でも導入可能ですが、今回は、親子間における取り組みに焦点をあててご紹介します。

まずは、大人である私たちが感情に敏感になることが大切になります。
日本の文化では同調や調和を美徳とします。そのため自分の気持ちを相手に伝えることを躊躇う方も多くいます。しかし、本来、日本語の感性や感情表現は豊かです

日本語には「寂しい」と「淋しい」など微妙な感情の違いを表す漢字がたくさん存在します。
しかし、心を漢字で表現できても、それを言語化し伝えることは苦手ですね。
雰囲気から察して欲しい人多くいるのではないでしょうか。

よくある、母親から子どもに向けられる言葉「いい加減しなさい!ダメでしょ」の間にある、お母さんはどうして怒っていて、どう思っているのかを伝えられるようになるといいかもしれませんね。

ここで、相手の立場に立てる子やお友達とうまく関係を築ける子がいた時に、子どもに注目するのではなく、その保護者に注目してみると面白いことがわかります。

その保護者の多くは「どう思う?」という問いかけを子どもによくしています。
また、「どう思う?」の前後に、「お母さんはこう思う」とお母さんの気持ちや考えも一緒に伝えている方が多いというのも特徴的です。


子どもは、親を手本に言葉の使い方を学んでいきます。
絵本読んだ後やテレビを見ている時に、「あなたなら、どう思う?」「お母さんはこう思うな〜」と話しかけてみるなど、親子の会話で、SELの5つのスキルを伸ばすことは十分可能です。

私は、子育ては子どもをどれだけ尊重できるか。そして、どれだけ感謝が伝えられるか。だと伝えることが多いのですが、これ、正直硬いですよね。

これをもっと素敵にわかりやすく表現すると「あたたかい言葉がけ*です。
これは、法政大学の渡辺弥生教授が小学生を対象にSEL授業をなさった時に使われています。
「あたたかい言葉がけ」って素敵ですよね。忙しい日常の中、みなさんも温かい言葉をもらえると心があったく、ほっこりしますよね。

あたたかな褒め言葉や、あたたかな支え言葉で心が育まれた子どもたちは、未来を自分で切り拓き、よりよい未来を歩める子どもたちになっていきそうですよね。

・CASL- Advancing Social and Emotional Learning https://casel.org/
・マリリンスプレンガー 感情と社会性を育む学び(SEL)子どもの、今と将来が変わる. 新評論
・*渡辺弥生.(2019).  感情の正体:発達心理学で気持ちをマネジメントする. 筑摩書房.
・山田洋平(2008)社会性と情動の学習(SEL)の必要性と課題 : 日本の学校教育における感情学習プログラムの開発・導入に向けて広島大学大学院教育学研究科紀要. 第一部, 学習開発関連領域 57 号 145-154 頁 https://doi.org/10.15027/25869

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森田 典子
森田 典子
大分市在住2児の母 ●思春期の親子関係専門家 ●元教師 ●心理カウンセラー ママが幸せになるであることが子育てには一番大切です。それにはママの心にちょっと余裕ができること!ママの心の余裕は子どもを笑顔にします。その余裕(心の隙間)が作れるように活動をしています。