子どもの成長に伴って、母親が迎えるさまざまな「卒業」の瞬間。
子育ての節目は、私たち母親の人生の転換期でもあります。2025年2月13日に開催される「卒○会」は、節目を迎えた女性を労い、新たな門出を応援する機会。そこでセミナー講師を務めるのが、女性の支援活動を行う株式会社OMOYAの代表 猪熊真理子さんです。ご自身も4歳の男の子を育てる猪熊さんに、母親たちの「自分らしさ」についてお話を伺いました。
不自由だけど、不幸せじゃない。息子の成長が教えてくれた「不自由な幸せ」
育児中の母親にとって、自由な時間を持つことは難しいもの。
猪熊さんも、初めての育児を経験する中で自由を失ったようなフラストレーションを抱えていました。
「人生の主人公だった自分が、急に脇役になったような感覚になって。あれもできない、これもできないって、不自由なところばかりが目について落ち込んでいました。でもふと思い直したんです。不自由だけど、不幸せなわけではないなって。子どもの成長や愛おしさを感じる瞬間を重ねていくにつれて、そこに今までとは違った自分の幸せがあるって気づいたんです」。
猪熊さんが語る「不自由な幸せ」は、多くの母親が共感するところではないでしょうか。
子どもを通じた新しい出会いをきっかけに世界が広がり、知らなかった自分を知ることに。
「コロナ禍に大分に移住して来たので、最初の2年間ママ友ができなかったんですよ。当時もう私は孤独なんだと思って心を閉ざしてしまったんですけど、あるとき勇気を出して自分からLINEを聞いて、初めてママ友ができたんです。一人ママ友ができたら自信がついて、自分から声をかけるようになった。子どもの変化に合わせて、受け身から能動的な自分に変わっていったんです。毎日息子に『愛してるよ、大好きだよ』って伝えていたので、人に対して愛情を伝えることに抵抗がなくなったんでしょうね。自分から心を開くようになりました」。
子育てを通じたブレイクスルーは自信となり、対人関係にも変化を及ぼしました。
「仕事でも愛情を出し惜しみせず、100%相手に伝えるようになりましたね。『あなたが好き!』って(笑)。自分から愛情を発信すると、伝えるたびに相手も愛情を返してくれる。その積み重ねが自信になっていきました」。
自分を知ると、自分が広がる。自分の小さな声に耳を傾けて
女性支援の仕事を通じてたくさんの女性をサポートしてきた猪熊さんは、子離れの準備として「どのような自分が幸せなのか、自分がどうありたいか」を改めて考えて、と伝えます。
「お母さんってやらないといけないことが山ほどあって周りの影響を受けやすい立場ですよね。子どもや周りを優先しすぎて、自分が何をしたいのか忘れてしまった人がとても多いんです。でも子育てには終わりがあるし、子どもが自立した後の人生も長い。後半の人生を子どもや周りに依存せず、自分らしく生きるために、自分の心と向き合う時間をとっていきましょう」。
とりわけ、猪熊さんが実践してきたのは「自分の声を聞き、見える形にすること」。
「自分がご機嫌になれる瞬間を“やりたいことリスト”として、紙に書き出してみる。例えば、『オムライスが食べたい』っていう小さな声でいいんですよ。叶えやすい願いから拾ってちゃんと叶えてあげることで、自分の味方でいる時間を作ってあげてください。自分で自分を満たせば、ちゃんと幸せになれるという小さな成功体験を積み重ねるんです。そして疲れたときやうまくいかないときこそリストを見返して、叶えられそうなものから叶えてみる。自分のために自分を癒すこと、自分を幸せにしてあげることが大事だと思います」。
小さな自己実現の積み重ねが、置き去りにしていた自分を取り戻す鍵になるといいます。
自分で自分の舵取りを。「なりたい自分」への意識の向け方
多くの女性サポートを通じて、変化を前向きに受け入れて、自分軸の未来思考でいることの大切さを語る猪熊さん。発する言葉に説得力が宿ります。
とはいえ、育児や家事に追われる中で、自分と向き合うゆとりを持つのは難しいものです。
そこで紹介されたのが、猪熊さん自身が実践していた気持ちの切り替え方。
「つらいことが続いていた時期は、『お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう』って、心から信頼できる人の顔を思い浮かべて寝るようにしてました。1日の最後をポジティブな気持ちで終えるための努力をしてたんです。家族じゃなくても、自己肯定感を育んでくれた土台に対する感謝って、ずっと残るものです。『愛してくれた』という根っこを思い出して、安心感や自尊心を取り戻す作業を意識的にやってましたね」。
“ ママは大きくなったら何になりたいの? ”
子どもに聞かれたら、どう答えますか?
卒◯会のセミナーでは、母親が見失いがちな自分自身を見つめ直すヒントや猪熊さんの心理学に基づいた知識や 、実体験に基づくリアルな言葉が語られます。子育ての孤独や葛藤、節目で感じる喜びと寂しさを経験してきた今だからこそ、以前とは違う「自分らしさ」を輝かせる方法が見つかるかもしれません。
子どもの節目を次の一歩に変えていく。
あなたの「これから」を一緒に考えてみませんか?
プロフィール
猪熊 真理子
株式会社OMOYA 代表取締役/女子未来大学ファウンダー
認定心理士。2007年(株)リクルートに入社。
「ゼクシィ」や「Hot Pepper Beauty」などの事業で事業戦略、マーケティングなどに携わる。会社員の傍ら、「女性が豊かに自由に生きていくこと」をコンセプトに、講演やイベント、セミナーなどで女性支援の活動を行い、高校生から70代の女性まで延べ5千人を超える女性たちと出逢う。2014年3月に株式会社OMOYAを設立。当社では、主に女性消費を得意とした、経営コンサルティングや企画マーケティング、組織のダイバーシティ・マネジメント改革、企業内の女性活躍推進などを行う。33歳で上場企業の社外取締役に就任。その他多数の企業や社団法人の取締役、役員、顧問などに従事。社会人女性の学びの場「女子未来大学」ファウンダー。多様な価値観の多様な幸せを女性たちが歩めるような未来を目指して女性のキャリアや心理的な支援活動などを行っている。著書に『「私らしさ」のつくりかた』
第2回 卒◯会:開催概要
卒◯会の詳しい内容については以下の記事をご覧ください。
参考記事
写真・文:山口紗佳